起業ストーリー
きっかけはプリミティーヴォ
私はこれまで政府系機関に勤めており、途上国の開発援助や観光プロモーションというワインとは全く別の分野で働いていましたが、海外出張や赴任が多かったため、業務の傍ら様々な土地のお酒を味わう経験ができました。特に、ワイン流通の中心地とも言われるイギリス・ロンドンで過ごした４年間は、多様な産地・品種のワインと出逢う機会となりました。
色々なワインを飲む中で、コストパフォーマンスに優れた濃厚でパワフルな南イタリアのワイン、特にプリミティーヴォ種を代表とするプーリア州のワインに完全にハマってしまい、現地を訪問してプーリアワインを探求するようになりました。
帰国後の決心と挑戦
日本に戻ってみると、自分が好きなプーリア産のワインは、他の生産地と比較するとなかなか売っていないことに気付かされました。今までは、日本国内で販売される海外ワインは星の数ほど多い…と漠然と思っていましたが、まだまだ、ヨーロッパ周辺でしか流通していない魅力的なワインが多くあることを改めて実感しました。
プーリアはワイン生産量もイタリア国内でトップ２に入る規模を誇り、沢山のワイン生産者がいます。多くは小規模の家族経営のワイナリーで、殆どは日本で知られることのない生産者たちです。日本や海外で知られていなくても、彼らが造り出すワインの中には、大変美味しく、さらにコストパフォーマンスに優れたものがあります。また、造り出すワインは毎日自分や仲間が飲むからこそ、製造方法・品質にこだわりとプライドを持っています。当然ですが、取り扱うインポーターがいなければ彼らのワインは日本で流通されません。素晴らしいワイン、そして、美味しいワインを毎日楽しむというスタイル、そんなプーリアの魅力を日本でもっともっと多くの方と共有したいという思いから、思い切って会社を辞め、自分で輸入販売を開始することに決めました。
自分で輸入するなら、自分が好きなプーリアワインを始めとし、まだ日本では広く流通していない高品質ワインを揃えたいと考えました。ブドウ造り・ワイン醸造への考え方や情熱に賛同できる生産者のワインを選りすぐり、本当に美味しいと思えるワインだけを集めることにしました。また、直接輸入することで、小規模ながらも良質のワインを造る生産者を応援したいとの思いもあります。このような経緯から、ワイナリー選定に始まり輸入から販売まで、全てを自分の手で行おうと決めました。
決意直後のタイミングに新型コロナウィルス感染爆発が発生…
着々と準備を進め、2020年内のネットショップオープンを目指していましたが、新型コロナウイルスの影響により、予定を大幅変更せざるを得なくなりました。
2020年の3月、輸入先ワイナリーを検討する目的で、スペイン、トルコ、イタリアを巡る旅へ出発。スペインではバスク地方も訪問し、海底熟成ワインを取り扱う貴重な機会に繋がりましたが、その後は予期せぬ出来事続きでした。到着1日前の3月9日からイタリアでロックダウン開始。プーリアの州都バーリに到着したものの、予約したB&Bから突然予約を取り消され、知人の現地ガイド（移動時の車を手配してくれた）からは国の通知で海外客を案内できなくなったと連絡がありました。公共交通機関やタクシーも使用できずワイナリー訪問も諦め、殆どの店が臨時休業中のバーリの町で、入手できる範囲でワインを試飲する事態に陥りました。
フライトの当日キャンセルが続く中、数日かけてやっと日本に帰国しましたが、それでも当時は見込みが甘く、夏頃にはまた渡航できると思っていました。自分が扱うワインは、ワイナリーに直接訪問し、生産者のワイン造りに対する考え方や情熱、人柄も含めて日本に紹介したいと考えていたため、再びワイナリーを自由に訪問できるタイミングまで待つこととしました。しかし、海外渡航がこれほど長期間にわたり規制されるとは…、今まで誰もが経験したことのない異常事態です。
国内でワインを本格的に勉強
海外渡航が自由に出来ない間、ワインを基礎から本格的に勉強しようと考え、世界的なワインの認定資格であるWSETのクラスに通いワインを猛勉強しました。猛勉強のあまり、試験対策用のアプリを2つも作りました（少し方向性が間違ってますが）。
1年間の学習期間中に、WSETのレベル２，レベル３と連続で受講し認定試験に合格したことで、自信も付き、さらにワインを深く理解し楽しめるようになりました。しかし、その間も完全に自由な海外渡航は再開されていません。ワイナリーには直接訪問できていない状態でしたが、できる範囲でスタートすることに。厳選したワイナリーと密に連絡を取りつつ、自信を持って美味しいと勧められるワインだけに絞り、先行的に輸入・販売することにしました。
会社立ち上げ、そしてショップオープンへ
ワイン販売に向けて、「美味しいワインを気軽に自由に楽しむライフスタイルの創造」というミッションの下に、会社を立ち上げました。熱意はあるものの、起業ばかりか貿易業務の知識・経験もゼロのため、戸惑い、不安は山積みです。
ワイン輸入時には、関係する企業・取引先の方々にアドバイスを頂きながら、一つずつ、慣れない複雑な手続きをクリアしてきました。今までは消費者の立場でしたが、海外から商品を輸入するためには順守すべき法令や必要書類も多く、輸入販売という行為の重みを改めて考える機会ともなりました。
このように長く、そして想定外の旅路を経てWine Shop Terreが開設され、皆様に美味しいワインをやっと届けられるんだ！！と思うと、本当に嬉しい限りです。まだまだ限られたラインアップではありますが、日本で知られていないワイン、またワインの楽しさをより多くご紹介できるよう、試行錯誤しながら着実に歩みを進めたいと思います。そして、美味しいワインを気軽に自由に楽しめる、そんなライフスタイルを皆様とともに分かち合い、そして皆様と一緒にワインを楽しめる日が早く来ることを心待ちにしています。