土着品種と家族の絆が息づく、小さな挑戦者たち
南イタリア・プーリア州中央部。アドリア海とイオニア海の中間に位置するチェーリエ・メッサーピカ(Ceglie Messapica)は、白い家並みが広がるイトリア渓谷の丘陵地帯にあります。この静かな町の歴史的な城壁の一角から、プーリアワインの新たな潮流が生まれています。
それが、2018年に家族で設立されたワイナリー「カンティーナ・エリア(Cantina Elia)」。若き醸造家セルジョ・エリア氏が、故郷の土壌と真摯に向き合いながら、地域の土着品種にこだわり、家族の絆と共に小さな挑戦を続けています。
北イタリアと海外で培った感性を、プーリアの土壌へ
セルジョ氏はプーリア生まれながら、バローロやバロッサ・ヴァレーなど国内外の名産地で研鑽を積みました。「クリーンでエレガント、バランスの取れたワイン」を目指し、帰郷後はあえて国際品種ではなく、プリミティーヴォ、ススマニエッロ、ネグロアマーロ、ヴェルデーカなどの地元品種にこだわっています。
各品種に最適なテロワールを選び抜くことで、それぞれの個性が最大限に引き出されます。たとえば、標高300mの畑で栽培されるヴェルデーカは、昼夜の寒暖差によって繊細な酸を保ち、ススマニエッロは赤土と石が混じるブリンディジ郊外の土壌で力強く凝縮された味わいを生みます。
家族とともに育む、温もりあるワイン造り
年間の生産本数は約1万本。小規模ながら、ラベルデザインから醸造管理まで、全てにセルジョ氏の感性と愛情が込められています。ラベルに描かれた自転車に乗る父ロザリオの姿や、「Rosarina」「Vittoria」といったワイン名には、家族への想いが込められており、その背景を知ると、1本のワインがまるで家族のアルバムのように感じられます。
さらに、彼らが運営するアグリツーリズモ「トゥルッロ・サンタンジェロ」では、トゥルッロに宿泊し、郷土料理とともに自家製ワインを味わうことができます。母ヴィットリーナや兄夫婦が料理や接客を担い、家族全員でのもてなし。大きな木の下、風の通るテラスでワインを囲む時間は、まるで彼らの家族の一員になったかのような温かさに包まれます。
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このワイナリー訪問記は、当社代表が執筆した書籍
『南イタリア・プーリアを旅する とっておきのワインと料理の楽しみ方ガイド: ワインインポーターが出会った、誰も知らない本当のプーリア』
にも収録されています。プーリアの隠れた魅力を、リアルな体験とともに綴った一冊です。
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プーリアワインの未来を形作る、新しい感性と土地への深い敬意。
カンティーナ・エリアは、静かな町の片隅から、世界へ向けてその魅力を発信しています。