南イタリア・プーリア州の中心部に位置するジョイア・デル・コッレは、“丘の喜び”という名の通り、なだらかな緑の丘陵が広がる美しい土地です。その自然の中に、家族経営の小さなワイナリー「テヌータ・パトルーノ・ペルニオラ(Tenuta Patruno Perniola)」は静かに佇んでいます。
創業は1821年。200年以上にわたってブドウと共に歩んできたこのワイナリーでは、今もなおプリミティーヴォやヴェルデーカといったプーリアの土着品種にこだわり、少量生産・高品質なワイン造りを貫いています。
医学から農業へ——造り手の決断
現オーナーのパオロ・パトルーノ氏は、もともと医学の道を志していました。しかし、家族の農園を受け継ぐことを選び、ブドウ栽培と醸造の世界に飛び込みました。
「ブドウの出来が悪い年には、ワインを造らない」。
この言葉に象徴されるように、彼は品質に対して一切の妥協を許しません。その真摯な姿勢と職人気質が、彼のワインに力強さと繊細さを与えているのです。
理想的な丘の畑、恵まれたテロワール
ワイナリーの畑は標高360〜380メートルにあり、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの酸と香りをしっかりと引き出してくれます。赤土「テッラ・ロッサ」や石の多い水はけの良い土壌、そして風通しのよい丘陵地帯という条件が重なり、果実味と凝縮感のあるブドウが育つ理想的な環境となっています。
この土地で育つプリミティーヴォは、「ジョイア・デル・コッレD.O.C.」としても知られ、イタリアでも特に評価の高い産地のひとつです。
ワイナリーに泊まるという体験
テヌータ・パトルーノ・ペルニオラには、ワイン好きの旅人に嬉しい宿泊施設が併設されています。
訪問時、門が閉まっていたため連絡を入れると、「鎖が巻いてあるだけだから、自分で外して入ってきていいよ」との返答に思わず笑ってしまいました。門から母屋までは意外なほど距離があり、のどかなブドウ畑の風景が続きます。
夕方、空がピンクに染まり、風が葉を揺らす音だけが聞こえる。そんな静寂の中に身を置いていると、「ジョイア・デル・コッレ」という地名の意味を、心から実感することができました。
小規模でも、世界が認めた味わい
パトルーノ氏のワインは、すでに国内外のワインコンペティションで高く評価されており、イタリアの著名ワイン誌『ガンベロ・ロッソ』では、最高評価「トレ・ビッキエリ(三つグラス)」を獲得しています。
こうした賞は、大手生産者でさえ簡単には手にできないもの。純粋にワインの質が評価された証であり、小規模な家族経営ワイナリーとしては快挙です。
フラッグシップワイン「1821 リゼルヴァ」
ワイナリーの原点を表すような一本が、「1821 リゼルヴァ」。
プリミティーヴォ種100%で造られたこの赤ワインは、しっかりとした酸、どこまでも続く余韻、複雑で奥行きのある味わいが特徴で、飲むたびに新たな表情を見せてくれます。
テヌータ・パトルーノ・ペルニオラが守り続けてきた伝統と、パオロ氏の哲学が詰まった傑作です。
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📚 もっと詳しく知りたい方へ
このワイナリー訪問記は、当社代表が執筆した書籍
『南イタリア・プーリアを旅する とっておきのワインと料理の楽しみ方ガイド: ワインインポーターが出会った、誰も知らない本当のプーリア』
にも掲載されています。旅のように味わえる一冊として、プーリアの魅力をワインとともにお届けします。
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