ラ・リオハ大学、セミナールーム、人

ラ・リオハ大学での海底熟成と地上熟成ワイン(デュエット)の飲み比べ

ラ・リオハ大学、セミナールーム、男性

スペインのワイン一大生産地にあるラ・リオハ大学

こちらの写真は、スペインのラ・リオハ州ログローニョにある公立大学、ラ・リオハ大学(University de La Rioja)内のセミナールーム。

ラ・リオハ州は、スペイン国内最大のワイン産地(リオハ・ワイン)ですが、この大学、1996年にはスペイン国内で初めて!ワイン学の学位を取得できる大学となりました。

海底熟成ワイン専門ワイナリー、Crusoe Treasure(クルーソー・トレジャー)の醸造チームを率いるDr. Antonio T. Palaciosは、この大学の研究グループに所属し、学部生向けの講義も行っています。
私たちとクルーソー・トレジャースタッフの訪問に合わせ、彼が教える学部生たちと一緒に「バスク海底熟成ワイン」の飲み比べをすることに!

 

ワインの専門家を目指す学生たちと、地上熟成ワインと海底熟成ワインの飲み比べ実施

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この日に飲み比べたのは赤と白ワイン1種類ずつ、「Sea Soul No.8(グルナッシ100%)」と「Sea Soul No.7(グルナッシュ・ブラン100%)」。
海底熟成させたワインと海底熟成なし(地上のみで海底熟成と同じ期間熟成させた)ワインを比較しました。

参加した学生は、今年卒業予定の学部生。
講義の一環として日頃から学生達も、海底熟成の仕組みについて興味津々。実際に試飲した彼らの反応は…「口に含むとわかるが、海底熟成の方が熟成が進み、より複雑さがあるので驚いた!」とのこと。学生達からの質問とDr. Antonio(アントニオ)の回答の一部を紹介します。

<学生達からの質問とアントニオの回答>

Q:「海がワインにもたらす効果は何ですか?」
A:「ワインは柔らかく円やかに、まるでベルベットのようになり、複雑さが増します。これらのワインにとってプラスとなる”変化”は、海中での熟成によって得られるものです。ワインに含まれるの酸味とタンニンの融合が図られ、果実味や果実感、そして凝縮感が高まるワインになります。」

Q:「どのような要素が海底にある(海底熟成される)ワインに影響を与えるのでしょうか?」
A:「波、(潮による)流れ(季節によっても異なる)、温度変化、圧力変化、運動学そのもの、水・波の動き、これらの海で発生するエネルギーが海中のワインボトルに激しく影響します。海底熟成は、地上熟成で(ワインの熟成に)求められる静寂と忍耐とは全く逆の考え方ですね。海底に沈めるには、タンニンや酸味がしっかりして力強く、海中で発生する激しい作用に耐えることができるワインが必須です。そうでなければ、海がワイン自体を破壊してしまいます。」

Q:「ワインの中に含まれる酸素はコルク自体に含まれる酸素がワインに入り込むのでしょうか?」
A:「いいえ、海中熟成されるワインは気圧の関係で*、地上(熟成する)ワインよりも多くの酸素を含みます。地上の大気圧よりも、より多くの酸素がボトル内に入ります。これは、海中でワインボトルが受ける圧力(水圧)によるものです。いずれにせよ、酸素が入り込むというのはナノ単位の話です(ナノ・オキシジネーション)。
*バスク海底熟成ワインは、海底約18-20mに位置する海底ワイナリーで熟成されます。

Q:「酸素が入れば、海水に含まれる塩もワインのボトル内に入る可能性があるのではないでしょうか?」
A:「いいえ、水(海水)も塩(塩分)もボトル内に入りません。このことを科学的に証明するために、海底熟成されたワインに対し複数の分析を行っており、その結果を保健当局にも提出しています。」

Q:「(海底で熟成させることで短期間で熟成できるのであれば)例えば、地上で10年間熟成させた状態を海底で2年間程度熟成させれば得られるのでしょうか?」
A:「(海底では地上より早く熟成するという)関係性はあるものの、地上熟成と海底熟成が同じ状態や分析結果となるわけではありません。それは、実際にワインを味わえば良く判ることですが。単なる年月・時間計算の問題では説明が難しい点です。それは(ワインの熟成において)別の”旅”であり、海底熟成はより熟成度が加速・進化する旅ではありますが、だからといって、地上の旅(地上で長期間静置する熟成)と同じ場所に連れていってくれるわけではありません。海中では、ワインボトルに対して海のエネルギーが加わり、また酸素も多く存在するため、水中では地上と比較してワインの”呼吸”がより活発になります。それに加えて、海中で発生する温度変化は、ボトル内の容積を変化させるため、ワインが化学反応する速度に対し非常に良い影響を与えています。」

Q:「海底熟成ワインにはどんなコルクが使用されているのですか?」
A:「コルクは、コルクでもOTR(コルクを介した酸素の移動量)が殆ど同じになるよう、個体差が少ないテクニカルコルクを使用しています。個体差がないコルクを使用することは、海底でワインを熟成させる際にとても重要です。海底熟成ワインの熟成・発達は、酸素の量、そして、ボトル内で生じる海洋エネルギーによって発生した運動変化と連動しています。つまり、海底熟成では、特に、重合現象やタンニン-アントシアニンの結合現象による化学反応が、地上よりもはるかに速く進むのです。なお、海底熟成と地上熟成で共通すると言えるのは、「暗さ」です。」

Q:「(海底熟成と地上熟成ワインを)比較して飲む場合、海底熟成ワインを先に飲む方が良いでしょうか?」
A:「(どちらでも構いませんが)白ワインの場合、先ず香り(嗅覚)として、海底熟成ワインは”海”を感じる部分があります。主観的かもしれませんが、少し潮風のような香りがし、嗅覚のプロファイルとしてもミネラルに繋がるアロマが感じられます。潮風のほのかな香りは、ワインをとてもエレガントにし、そして食欲も促進してくれます。もし、あなたが海底熟成させたワインを飲むとき、そのワインが海の香りがするならば、それはポジティブな意味で”良い香り”と言えるでしょう。でも…、自分自身で味わってみて、違いを感じて下さい!」

 

ラ・リオハ大学のキャンパス

ラ・リオハ大 学の敷地内にはブドウの木も。テンプラニーリョ種などが植えられていて、この日も学生が手入れ・観察していました。

彼らは今年卒業予定の学生で、卒業後はワイナリーやワイン関係の仕事に就く予定のようです!

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